【印刷LAB】シルクスクリーン 厚膜プリントで立体感を表現する。
今回は、「厚膜プリント」という方法のご紹介です。
シルクスクリーンのメリットとしてよく挙げられるのが、インク自体の発色の良さであったり、インクのゴリっとした厚み。
それを存分に活かすために、通常のプリントでも「重ね刷り」という工程を施す場合があります。
これは濃色生地に対して淡色インクの場合、いくらシルクスクリーンであれでも、下地である濃色生地の色が透けてしまうもの。なので一度刷ったものを熱で仮乾燥させた上に、もう一層インクを印刷してあげます。そうするとインク自体により厚みが発生して、生地の色の影響をより受けづらくなります。
これも一種の厚膜プリントです。
が、今回はそうじゃない。
よりデザインを「立体的」なものにする方法のご紹介です。
下準備 〜厚膜製版〜
厚膜プリントというのは、割と文字のままなのですが「厚い膜のプリント」です。その厚い膜のプリントが出来上がるまでには、まず「厚い膜を有した版」が必要になります。版のフレームに【紗】と呼ばれるメッシュを張ります。超細かい網戸みたいなもの。それに感光乳剤を塗布して、デザインを現像していくのですが、この段階での乳剤の膜厚を、通常のものよりかなり厚めに仕上げます。通常の製版は100μ前後なのですが、厚膜製版では 350μ〜400μほどの厚みにします。
単純な話だと、 100μの版だと1回刷って最大でも100μ厚のプリント。それ以上は厚くできません。もちろん重ね刷りを幾度と繰り返すことで少ーしずつ厚みは増していきますが、なかなか大変。
それが400μの版だと、1回刷っただけで400μ厚のプリントができるということです。
ただまぁ、そのための厚膜製版。これが手間のかかる工程なんです。塗布 → 乾燥 → 塗布 → 乾燥 の工程を、目標の数値になるまで繰り返していくため、通常の製版と比べてかなりの時間を要します。また厚膜にはそれに応じた専用の乳剤を必要とします。
それにプラスしてシャープなエッジがないといけないので、製版の様々なプロセスの中で1つ1つが重要な鍵になります。
厚膜プリントで使うインクについて
目標の厚みに到達した版ができれば、次はプリントです。
ここで使うインクは「油性(プラスチゾル)インク」なのですが、いつも使うものとは異なり、それ専用のインクになります。厚膜プリントにおいて最も重要なことはデザインのエッジのシャープさです。どれだけ厚みのある版ができたとしても、それを粘度の低いのインクで刷っても厚膜プリントは生まれません。
かなり極端な例ですが、生地の上にどれだけ墨汁を落としても、厚さは生まれませんよね。厚膜プリントでは、インク自体に粘度と硬さがあり、流れずに角がバシッと立つような効果を得られる特殊インクを使用します。
と、文章でツラツラと書いても具体的にわかんないので、実際に刷ってみましょう。
実際に刷ってみる。

イイっすね〜〜
今回は厚みを活かしたデザインを用意しました。
わかりやすいものがいいかなーと思ったので、パズルです。
本当にパズルがソコにあるかのような。
だがしかし、シルクスクリーンプリントです。
実際のパズルぐらいの厚み。指の引っ掛かりもリアルと遜色ありません。
それでいて洗濯も可能ですし、堅牢性は通常レベルにあります。
通常のラバープリントで、ここまで厚いプリントにしようとすると、前述した重ね刷りを何十回としなくてはいけません。しかも、通常のインクだといくら重ね刷りをしたとしても、ここまでデザインのエッジ(角)が立ったようにすることは、インクの特性上、難しいのです。
厚膜プリントでは、どの色であっても数回の重ね刷りでこのレベルまで持っていくことが可能です。

実際に今回のグラフィックで厚膜を使用したものは、アンダーベースである上記画像のホワイトのみです。
その上に通常のラバーインクでブラックを印刷しています。

ブアツイ・・

最後に引きのワンショット。
いかがでしょうか。
考察
こういう”バカ”なプリントって最近見なくなりましたよね。
代替できる方法ができたのか、流行り廃りの中で消えて行ったのかは全然知りません。
ただ、2000年代初期ぐらいの、特にスケートブランドのアイテムで、こういうワケわかんねープリントが流行ってた印象があります。僕も古着が好きで見たりもしていたのですが、何だコレってよくなってました。
多分当時色々な技術が誕生する中で、いかに最新で、”バカ”なやり方でやるか、が重要だったのでしょうか。
実際にコストは、フツウよりかかります。
けど、一周回って現行品で見なくなった今、他と被らないオリジナリティになるんじゃないでしょうか。
いわゆるパッチのようなプリントだけど、パッチではできない表現かと思います。
その細かさはシルクスクリーンならでは。
しかも、通常ラバーで展開している色だと、どんな色でも厚膜用に対応はできます。
キブンによって色変えも可能。
いいじゃないですか〜。
これを活かすも殺すもアイデア次第でございます。
今回はこれぐらいで。
プリントのご依頼や、この印刷方法について気になる方は是非お問い合わせください。