【印論 #4】ゲスト : Yusuke Nakata / You2

対談 with Yusuke Nakata / You2 氏
印刷工場であるwanna studioが〔プリントを頼む側・頼まれる側〕の関係を持つゲストを招いて、印刷や服飾・その背景にあるカルチャーについて語る対談企画「印論」。第四回はアーティストの「Yusuke Nakata / You2」 氏との対談。今回は、東京某所にひっそりと構える彼のアトリエにて対談させていただきました。

コージ : 今日は宜しくお願いします。まず、自己紹介お願いしてもいいですか?
Yusuke Nakata氏(以下You2) : You2です。最近は本名である Yusuke Nakata 名義で活動することもあったりです。主にアーティストとしての活動をさせてもらっています。元々は関西でイベントで、売ることを目的ではないんですが、作品を展示したりしていました。4年前ぐらいに東京に引っ越してきて、本格的に個展をするようになって今に至るという感じです。
コージ : 出身はどこだったっけ?
You2 : 生まれたのは大阪だけど、育ったのは北九州と長崎ですね。高校までは九州にずっといて、大学で関西に行った感じですね。その時にeach makesの方達と出会いました。
コージ : そうかそうか!
You2 : 当時よく大阪のショップのSLONに溜まっていて、そこのスタッフだったタイセイくんにeach makesのZINEのイベントを教えてもらって行きました。コージくんと初めて会ったのもそこです。
コージ : COFLOの跡地で、今はないビルなんだけど、そこで僕らも催事をやらさせてもらってたんだよね。だいぶ前だねー。
You2 : そうですね。色々アウトプットのやり方を模索していた頃だったので色々話させてらもってました。
コージ : 僕らもやり慣れていた訳でもなんでもなかったけど、懐かしいね。each mekesで言えば、当時作っていた「FILTER」っていうフリーペーパーのZINの表紙をYou2にお願いさせてもらったよね。プライベートでガンガン遊ぶこそなかったけど、そういうこともあって密な関係になっていたような気がします。
You2 : そうです、有難うございました。その頃あたりから自分の作品を見てもらう機会を増やしたいって思うようになって。東京は見てもらえる機会だったり、人の数でいう母数があると思って。地球儀で見た時でも、東京ってビックシティだし、そこで自分を試してみたい欲がありました。
コージ : 見る人の数を増やしたいっていうのがあって、実際に東京に拠点を移して、それを肌感で感じるものはある?
You2 : うーん、そうですね。九州だったり関西で展示を繰り返していく中で、少子高齢化を感じてしまっていたというか。同じ世代に人が少ないような気がして。その点では東京はそこが補填されて、ヴァイブスもフレッシュでいれて、アプローチしやすいのかなと思ってます。

コージ : You2の作品は使っている素材がスニーカーを元にしているもので、カルチャー的にもストリートの要素が多くあると思うし、確かに関心がある人は若い人がより多そうよね。今は靴というモノをバラして再構築するっていう手法を使っているけど、なんでソコに至ったの?
You2 : 自分が美しいって思うものっていうのは、時間とストーリーと過程があって、尚且つ崩壊の中にレイヤーが存在しているものだと思っています。当時New Yorkに暫く滞在している時があったんですけど、向こうで買った履き潰していたスケートシューズを捨てれずに持って帰ってきて。元々は、その自分の履き潰した1足がそのまんま「カッコいい」と感じて、そのまま額に閉じ込めたいという衝動から始まりました。
コージ : そうだよね。過程とかストーリーを感じれるモノって専門的な道具も然り、色々あるけど、靴っていうものはすごいわかりやすいし、一般的かもしれないね。
You2 : 元々は自分が履き潰した靴か友達からいらなくなった靴をだけもらってコラージュを製作していました。全部スケートシューズでした。
コージ : 同じ靴でも履く人によって表情が全然変わるよね。僕らで言えばインクがバンバンについてたり、スケーターで言えば靴の削れる所が違うから、靴だけでその人のスケートスタイルが見えてきたり。ここまで履き潰すかって人もいれば、割と綺麗な状態で買い替える人もいれば。ストーリーとしては足元は、ほんとに人となりが見えてくるね。
You2 : この手法を使い始めた頃は、その製作の過程におっきくフォーカスを置いていたんですけど、今のコンセプトは少し変わってきたところはあります。今の社会は資本主義社会構造であり、価値は貨幣を基準に成り立っています。それをベースに考えた時に、自分たちのボロボロに廃れたスニーカーを美しいとする感覚は、その資本主義社会構造に対する矛盾であり、社会との葛藤が摩擦としてシューズに表象されると考えています。スニーカーは人の生き写しであって、それを使って僕が一つの作品にすることで、その作品の持つストーリーに共感してくれる人たちと、感覚をシェアしたいと思っています。
コージ : 完成した作品のビジュアル的な要素以外にも、You2がピックしたが素材自身に、共通の意味合いがあるんですね。



コージ : 出来上がった立体物の作品を展示するタイミングの折々で、その催事ごとのYou2のマーチを製作することで関わらさせてもらってきています。今までだと、3作品ぐらいかな、立体の作品をそのままにコピーしたものを、ポスター / Tシャツに落とし込んできたと思うんだけど、その点は普段している立体物の製作と違う面白さは感じていますか?
You2 : そうですね。作品をコピーするイメージなんですけど、同じ作品として「経過」を楽しめるものでありたいですし、尚且つ洋服であれば、廃れた後でも「良い」とされるものが洋服に作るのであれば一番大事にしないといけないと思います。
コージ : それこそ、You2の作品で重要な「経過」の点であれば、僕らが提供しているプリント方法はソコに共通する部分があると思う。分解と再構築というのも普段僕らもやっていることで、一度分解したグラフィックや作品を、一色ずつ刷る中で完成に近づいていくっていう。
You2 : そのやり方自体、いつもリスペクトを感じています。
コージ : ものづくりの感覚で言えば近いよね!
You2 : 昔はインクジェットとシルクスクリーンの違いすらもあんまし分かってなかったんですけど、自分で調べる中でワナでやっていることは間違ってなかったんだなってなりますし、肌感でカッコいいと思った人たちのやってることを信じて良かったって(笑)。
コージ : 実際に僕らが刷ったものの満足はしてもらえてる?
You2 : いや〜、毎回150%で最高です。
コージ : 有難う!ここ、書かさせてもらうね(笑)。
You2 : もちろんです(笑)。アパレルも然り、他のシルクスクリーン印刷を見る機会っていうのも増えたんですけど、wanna studio の持つ緻密さだったり、何でこれがこうなってこうなるのかっていう背景についての説明のわかりやすさは、すごく有り難いです。この間の作品は、文章であれやこれやいうより、作品を見てもらって方が早いわ。ってなって弾丸でスタジオに実物を持っていかさてもらって(笑)。
コージ : You2 とやってきたプリントは、昔ながらの手法故に生じるコトが多かったんだけど、そうやって話せるとお互い安心して製作できるよね!これはデメリットではなくメリットに変換できる要素だよって説明もできるし。今はCMYKプリントの新規受注は止めちゃってるんだけど、それに変わるやり方を模索していたり、常にアップデートしながら、依頼してくれる人に寄り添える工場ではありたいと思ってる!
You2 : 最高です。いつもプリントしているものは作品を撮影した写真なんですけど、目指すところは実物の作品とニアリーイコールぐらいコピーできているものなので、作品の色だったり光の当たり方までなるべく忠実に再現したいと思ってます。その辺りの打ち合わせを密にとれるのは良いですし、印刷途中で仕上がりのチェックをさせてもらったり、wanna studioだからできるところは特に重要視して活用させてもらっています。


コージ : ボディへのこだわりはありますか?
You2 : アパレルに落とし込むものは、基本的には作品にコピーなので、ボディ自体はキャンバスで軸になると捉えてます。細かい拘りがあるっていう程でもないんですが、最低ラインはあります。このぐらいの質感がいいとか、これぐらいの色ノリがいいとか。作品をどれだけ忠実に再現できるキャンバスであるかっていうところですね。この間の作品で使ったボディは割とボックスシルエットでしっくりきています。
コージ : 確かに。フルカラーを用いた繊細な作品のコピーである以上、You2の中ではソレが崩れるような影響が出るような生地では駄目なんですね。
コージ : 毎日、作品を生み出すための作業をしていると思うんですが、そこに対しての拘りは?
You2 : 自分の背丈を超えないことが一番だと思っています。規模感とか表現の幅。なんて言ったらいいだろう。貪欲に格好いいものはは求めてるんだけど、自分ができないことは無理にやらないです。ブレないように、というか。
コージ : それはあるある。少しベクトルが違う話かもしれないけど、僕らもカッコつけたくて求められた無理な仕様を受けて、最後迷惑を掛けて散々な目にあえばカッコ良くもないし、むしろダサくなっちゃう。無理を全くしない訳ではないけど、そのリスクは避けないといけないと思う。
You2 : 僕とコージくんで話すみたいに、アーティストとクラフトマンの間で「作り方」の違いを話すことが多いと思うんですが、僕はアーティストの中でも作品を作る上でのロードマップが先にできている方だと思います。
コージ : そうだね、ソコは僕たちと同じだね。
You2 : wanna studioっていう工場で作るプロダクトは、お客さんが作った「ソレ」にするための明確なゴールがあると思います。僕は、自分の進みたいロードマップとは別で「シューズの持ち主のストーリー」と「バラしてる時に思いつく自分が踊れる場所」、「廃れたシューズのインテンション」との3要素で構築しながら作っていきます。ただ、その前提にあるロードマップは自分の身の丈にあったサイズになっていると思います。ルーティンで言うと、製作にあたってリズムはありますね。製作は常に5作品ぐらいをグルグル作っちゃいます。一つだけに集中しちゃうと手が止まってしまうタイミングがあってそれがストレスになって。休む時間はない方が向いてるかもしれません。その代わりにたまにぶっ倒れちゃいますけど(笑)。
コージ : 無理しすぎたら駄目やけど、常に何かをやりたい性かー。身体には気をつけないとね(笑)。
You2 : 今まで作ってもらったTシャツも全部良いと思っているんですけど、今後は作品のコピーだけど、そこに立体的な要素があるものもやってみたいです。発泡プリントだったり、シルクスクリーンと刺繍の組み合わせだとか。やっぱりレイヤーがあると深みを感じれるものだと思うので。
コージ : プリントTシャツっていうもの自体は好きなの?
You2 : 大好きです。大前提、自分で作るものは絶対に自分が着たいモノにはしようと思ってます。
コージ : 2025年の展望とかはあるんですか?
You2 : 3個軸を決めていて。マスク作品を中心として海外で観せる場所を増やすこと。大きい作品を生み出す。アーカイブブックを作ること。です。
コージ : 有難う!色々話せて良かったです。
You2 : 時差ボケで今日大丈夫か不安でした。有難うございました。


Yusuke Nakata / You2
大阪で生まれ九州で育つ。 大阪に戻り2019年頃から自身の履き潰したスケートシューズを用いたコラージュ作品を作る。現在は、自身を取り巻く環境に属する友人・知人が履いていたシューズを使用し、製作に取り組む。「劣化し、破壊された靴」にある負のイメージに、「創作する」ことによる正のフィードバックを与えることで、暗澹とした世界や感情から光を見出したときの瞬間的な美しさを立体・半立体的に表象する。
2022年「ANECDOTE」、2023年「Precinct」2024年「Prologue」「SOAR(→25)」と過去4回の個展を敢行。現在は映像作品やBOOK、インスタレーションなど、表現の裾野を広げる。
instagram : @yusukenakata_
HP : https://you2.asia/