【印論】guest : Nihar Jhaveri(bedlam)
対談 with ニハール・ジャベリ(Nihar Jhaveri) 氏
印刷工場であるwanna studioが〔プリントを頼む側・頼まれる側〕の関係を持つゲストを招いて、印刷や服飾・その背景にあるカルチャーについて語る対談企画「印論」。第三回は「bedlam」のデザイナーであるニハール・ジャベリ(Nihar Jhaveri)氏との対談。今回は、東京の蔵前にある同ブランドのフラッグショップにて対談を設けさせていただきました。
コージ : ニハルくん、今日は宜しくお願いします。
Nihar Jhaveri氏(以下ニハル) : イエ〜、お願いします。
コージ : 軽く自己紹介的なもの、お願いできますか?
ニハル : bedlamというブランドをやっています。今はコージとユタロー(ワナSTAFF)と蔵前国際通りにいます(笑)。
コージ : 年末近くにこうやって喋れるのは嬉しいっすね〜。bedlamとの関係もなかなか続いていると思うんですが、元々は大阪で「REPORT」っていうブランドをされているpeipeiくんからの紹介だったと思います。
ニハル : そう!結構前じゃない?2019年とか。昔使っていたプリント屋がいきなり辞めちゃって。その時よくノブさん(peipeiくん)と連絡とっていたりした時に「ワナあるよ。」って教えてくれて速攻連絡したよね。その時はまだワナは前の住所だったと思う。
コージ : その時僕はニハルくんを知らなくて、やり取りを初めてからは2年ぐらいはずーっと電話だけで仕事の話をさせてもらってましたよね。ただ電話口だけでニハルくんの「いい人感」はビンビンに感じてました。電話切る時にいつも「ピースピース」って(笑)。初めて会ったのはwanna studioが東京で催事をした時だったと思います。
ニハル : ちょうどこのお店が出来たての頃だったかな。散歩して川でビール飲んでたよね。(笑)あー、ビール飲みたいね!
コージ : まじ飲みたいっす(笑)。
ニハル : nice bro. 最高だね〜。
コージ : 元々bedlamを知らなかった頃でも、大阪の知り合いがキャップとかを被ってるのをよく見ていたりはしていたので、認知はしていたんですが。近いところだと、大阪のCOFLOでも取り扱いされていたので、プリントのグラフィックTシャツの印象が強かったです。実際一緒に仕事をさせてもらっていてbedlamは刷り甲斐があるというか、面白いというか、ワクワクしますね。
ニハル : おー、まじ。そういうのは聞いたことなかったね。プリントしてる時とかにbedlamっぽさって感じる?
コージ : いやー、めちゃくちゃ感じます。シーズンごとに8型ぐらいをドカンと依頼してもらうときに、毎回メール見ながらニヤニヤしてます。色づかいだったりプリントのサイズ感だったりは勿論なんですが、惜しみなく版を使ってるのに「いいね〜」ってなりますね。シルクスクリーンって色数が増えるにつれてコストかかっちゃうじゃないですか。でもbedlamはちょこっとしたトコロにも惜しみないですよね。
ニハル : おー、確かにそうかもしれない。色の使い方とかはあんまり自分では全く考えてなかったけど、bedlamっぽくなってるんだね。
コージ : 実際にニハルくんがプリント頼む時とか、グラフィックを作る時のポイントはありますか?
ニハル : 出来上がるまでは満足はしないようにしてる。でも自分のイメージだったり言いたいことをどうデザインで表現するかは難しいし、もっと上手くなりたいね。
コージ : 服作りの中でも、グラフィックTシャツなんかは何を伝えたいのかが視覚的にわかりやすいですよね。表面的にある勢いやイメージは、プリント自体のインパクトだったり、色の使い方だったり。bedlamはそれが強い方だと思うんですが、実際はどうですか?
ニハル : 簡単なコンセプトがあればいいんだけど、グラフィック自体にレイヤーは持たせたいんだよね。深い意味が欲しい。けどそれは自分の経験と知識の身の丈に合ったものじゃないといけないと思ってる。僕はインド人で、ルーツは日本だけではないから、それを日本人にうまく伝えるのは結構ムズイ。
コージ : 意味を誤解されてるんじゃないか、とか、ありますよね。
ニハル : そうだね。好きなお客さんとか友達に説明して面白いのを出したい。そういった意味でレイヤーはいる。表面的に面白くて、その裏も面白かったらサイコーなんだけどね。あとはbedlamは日本だけじゃないところに視野を向けてるんだけど、日本ではインドってターバンとインド文字とかのイメージが強いんだけど、実際はもっと大きくて。そのイメージばっかりで、僕自身がナイーブになった時期もあるね。日本は特にそのフィルターが強いから、今はインドっぽさはあまり出さないようにしてる。
コージ : 日本人が日本でブランドをする上では気にしないことかもしれないですけど、bedlamはまた違った角度でモノづくりだったり考え方も持たないといけないんですね。
ニハル : 自分のルーツを出しすぎるとグラフィックのイメージが先走っちゃって、国自体に違うイメージが付いちゃったら怖いですよね。ただインド人がやってるブランドってなるのは嫌だし。実際インド文字ばっかのグラフィックだと、インドでは誰も着ない。お土産みたいに見えちゃうから。日本はホームだけど、世界中の色々な人に見てもらって、同じようにフィールしてもらいたい。だからbedlamのコアの部分はちゃんとキープしながらどうやって作っていくか悩むね。色々な知識と目が大事。
コージ : なるほど。新しい視点でのモノづくりの話なので、そういうこともあるのかってなりますね。
ニハル : っていってもたまに意味のないヤツも作るんだけどね(笑)。
ユタロー : bedlamって色使いだったり、ハッピーな印象を受けるんですけど、インスピレーション元はあるんですか?
ニハル : 意図的にハッピーな感じにしようとは思ってはないんだよね。多分日本人は色に対して敏感で、環境もあると思うけど、奇抜な色に対して自然にそう感じちゃってるのかも。日本なんかは分かりやすく色で遊ばない国だし、目立ちたくないってお国柄的に思ってしまってる。色々な色のボディカラーを出すんだけど、やっぱりオーダーが来るのは目立たない色が多いよね。黄色のものとか赤のものとかはなかなか売れないよ。だからあえていっぱい出したい(笑)。
コージ : 表面的なところでハッピーな雰囲気だと思われるのはいいんですか?
ニハル : 全然いいと思う!その中で意味をしっかり話せるモノなら。
コージ : 先ほども少し話をさせてもらったのですが、bedlamではグラフィックプリントのプロダクトを出す時は基本的にはシルク印刷を採用されているかと思います。ニハルくんはどういう良さを感じてますか?
ニハル :うーん、 触る時イー気持ちになる(笑)。あとは油性は長持ちするよね。僕はリスペクトを込めて良いものを出したいし、頑張って稼いだお金を払って買ってもらう人も長く着たいと思ってるだろうし。ずっと着ていっても、変化もありながらもずっと良い状態だなーって満足し続けてもらえるんじゃないかな。だからシルクスクリーンがベストだと思う。
コージ : そうですね。新品のパリッとしたインクノリの良さもあるし、ボロボロになった時の経年変化した良さもある。その意味で「ずっと良い状態」になってくれますよね。
ニハル :あと、 僕のブランドは結構厚めにプリントすることが多いと思うけど、他のブランドとかでもそうなの?
コージ : デザインによりますよね。ケースバイケースで一番いい方法で考えてます。bedlamだったらニハルくんは厚めのプリントが好みなのを知っているので、大体は一手間かけて厚めにしていることは多いです。でもお客さんによっては、コスト重視で安く済ませないといけないっていう方もいるので、その一手間をわざと省くこともありますね。
ニハル : おー、なるほどね。面白いね。ナイスナイス。
コージ : ボディの好みとかはありますか?
ニハル : ありますあります。これからはどんどん夏が暑くなるから生地は薄めにしないといけない。だからこれから作るものは全部インド製のオリジナルボディにするよ。
コージ : あー!前にこのボディに刷らせてもらったことありますね。コレ、薄いけど柔らくて良いですよね。インナーで問題ないレベルだけどペラさはなくて。しかもこの前思ったのが、これプリント綺麗に乗りますよ。
ニハル : おー、まじ!
コージ : まじです。ボディによって、デザインが同じでもインクのノリ方が全然変わっちゃうんですよ。わかりやすくいうとGILDANのTシャツはあんまり綺麗にでないです。ブランクボディブランドで流行ってる生地の凹凸が強いスウェットだったり。デザインのエッジが少し崩れた見た目になりがちなんですが、やっぱり表面が滑らかなボディは、デザインも滑らかで凹凸が少ない綺麗なプリントになりますね。このインド製のオリジナルもその類です。
ニハル : それはいいね。これから使っていくからよかったよー、ありがとう。僕もお店に立ってお客さんの反応を見てるけど、若くても年上のお客さんでも、やっぱりボディの良いモノと悪いモノがしっかりとわかってる気がする。良いものには少し高くてもしっかり価値を見出してくれる。僕もそれに応えないといけないし、勉強させてもらってるよ。
コージ : 今まで印象に残っているプリントは何ですか?
ニハル : 色々あるよ!というかどれも満足してる。ワザと真っ直ぐじゃない微妙な歪んだ線だったりもあるんだけど、そういう細かいところもバッチリプリントしてくれるから。あとはGIBOとかも飛ばされたよ!僕の予想よりちゃんと表現してくれてよかった。あえてしているグラフィックの歪みもあるんだけど、そうじゃないところはワナから連絡してくれて、そっちで修正したりしてくれるから助かるよ。どれもいいから、これが一番っていうのは難しいね!
コージ : いや〜、ありがとうございます。
コージ : クリエティブな活動の中で、ルーティーンはありますか?
ニハル : 散歩。
コージ : 散歩(笑)。
ニハル : そうそう〜、めっちゃ僕散歩する。ずっとしてる。あとは一人になることだね。あんまり1人なれる時間はないけど、いいんだよね。メンタル的なゾーンに入って、そこから全部生まれて。アイデアが生まれるまではそういう時間が必要。それからどうやって形にするかのモーションは僕の中でわかってるから難しいことはないんだけど。満足したモノができたら人にいるところに出て色々な人の話を聞く。自分のスタイルが一番大事だけど、人の話を聞くのも必要かな。話を聞いた上で「やっぱこれだ」ってなることもあるしね。バランスだね。
コージ : ゴール地点が見えない状態から始めるゼロからイチの過程は僕は苦手なので、めっちゃ難しいですよね。
ニハル : でも逆もあるね。何も見ないようにする。休みの日に服屋とかは行かない。
コージ : 新しいアイデア欲しい時は一旦離れるのはいいですね。僕たちもずっと刷り続けてると、いい意味でも悪い意味でも頭が堅くなってしまいそうになる時があるので。息抜きがないと。吸収することも多いけど、どうしても視野が凝り固まっちゃいます。
ニハル : じゃあ散歩だね(笑)。というかまたポスターやりたいんだよね!
コージ : ポスターいいですよね!前お店伺った時も「一緒に作品作ろう」って話してましたもんね!やりたいっす。なんか僕らはプリントの手法の方でアイデアを出して、ニハルくんの頭の中を作品にしたいです。
ニハル : いやーやろうよ!アイデア出たらすぐTELするよ。
コージ : 楽しみにしてます!今回はありがとうございました。
bedlam
2012年に設立された、デザイナーNihar Jhaveri氏が率いるブランド。アパレルからアクセサリーまで、他では類を見ないセンスとバックグラウンドを掲げてプロダクトを展開し、コアなファンから強い支持を受ける。世界各地に展開する他、東京の蔵前に同ブランドの旗艦店を運営している。
URL : https://umpiretokyo.stores.jp/
instagram : @bedlamworldwide
FLAG SHOP : 〒111-0051 東京都台東区蔵前3丁目9−5 マリコビル 1F