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コラム

1色プリントでもレイヤーで〈深く〉なる。


レイヤーについて


ミナさんは、レイヤーというのはご存知でしょうか。

いわゆる「層」を意味するもので、デザインに携わる人にとっては、よく聞くワードです。透明の薄いフィルムのような役割で、1枚1枚のレイヤーごとに前後関係の役割を持ちます。いわゆるトレーシングペーパーのようなもの。これを押さえた上でデザインを作らないと後からデザインの校正ができないことや、デザインを受け取る側のプリント業者である僕たちにとっては、版下データを作成する際に、コトが複雑になってしまうこともしばしば・・・。困る時はまぁ困ったもんだと頭を悩ましてしまうことも。



版下データ : シルクスクリーン印刷用の版を作るための印刷用データ(デザイン原稿)


今回のテーマは1色のベタデザインに、本来必要のないレイヤーを”わざわざ”作って応用することで、デザインにストーリーを乗せた”深み”を出すことができるのです。という内容です。

基本的にデザインというのは表面的に見えるものが全てで、Tシャツにプリントをするときも基本的にその考えの上で色ごとの版下を作成して、刷ったときにモニター上で見えているように仕上げていくもの。ただ、今回のテーマであるレイヤーを作る意味としては、デザインに前後関係や時系列を視覚的に感じれるようにすることです。

「何言ってんのかよくわかんねーよ。」って感じなのですが、実例と共にご紹介できればと思います。

実際に刷ってみる


今回のデザインはコチラ。QUALITY CONTROLです。

僕が身を置く業界で最も大切であろうことです。日々精進。
かつ、ビガップ JURASSIC 5!ということで。

上の画像が完成形なのですが、見てもらえれば前置きした「レイヤー」の意味がなんとなくわかりますよね。同じインクを使った1色構成のデザインをわざわざレイヤー分けして刷ることは基本的には意味がないのでやる必要がありません。でもこのデザインは「ぶっといペンで描いたハンドレタリング」というベースがあります。そのペンの流れやインクの重なりを、実際に1色のペンで描いたようなプロセスとリアル感をベタ版プリントで表現しよう、というテーマです。一本の同じペンで書いているのと同様に使っているインクは1種類で、色味や濃度などが同じ1色です。


筆跡のライン同士が重ならないように、レイヤーを3つに分けて作版し、プリントします。


このレイヤー感をわかるようにするために染み込みインクを使用しています。通常のラバーインクのようにインク自体の隠蔽度(不透明度)が高い場合は、重なり合った部分の下層にあるレイヤーの影響を受けないので視覚的に伝わりづらくなってしまいます。水彩画のように、重なるにつれて濃くなることで、この意図が伝わりやすくなります。3つのラインが重なった箇所はその分濃い色になっています。

本当にリアル感を求めて1線ずつ版を分けて刷ろうなんてことをしようとすれば、総書き順の数だけ版がいるので、そこは現実的でないといけないですし、完成形は今回の仕上がりと同じになるので意味はありません(笑)


「実際に描いたものだよ。」と言われても遜色ない仕上がり。


このデザインを”1色”で他の方法で刷ってみる


このデザインをシルクスクリーンを使った他の方法で刷ってみるとどうなるか。

基本的には1色で刷るということはレイヤー(版)は1つだけになります。


【1色ベタ版の場合】


これは全てのレイヤーを合体させた1版のベタ版構成の仕上がりです。こうなると、ペン同士の重なりの表現は不可能。ぱっと見は似てるかもしれませんが、今回のテーマに沿った実際にペンを走らせた”ストーリー”は感じれないです。




【1色網点(ハーフトーン)版の場合】


これはモニター上に見える濃淡表現をそのまま網点(ハーフトーン)化して1版で刷ったもの。色の濃淡はハーフトーンの密度などで表現することができるので「濃いところは濃く、薄いところは薄く」と多少の差を感じることは可能です。

ただ今回のテーマに挙げたリアル感は表現はできません。そもそも実際に描くペンはベタ版のようなもので、描いた部分にハーフトーンは存在しない。そして、これはあくまでハーフトーンの密度で濃淡を表現しているので、実際の筆跡同士の重なりもナイのです。

表現したいことによって手間をかけることが楽しい


手間をかけることは今の時代に逆行するようなことで、時間もかかればマネーもかかっちゃいます。でもそこに魅力を感じることもしばしばありますよね。後述したように、他の方法でそれっぽく作ることもできます。一概にそれがモノとして悪い話ではないんだけど、やり方を知っていれば、もっと表現の幅が広がるし、作品の意図が伝わりやすくなる。そして少し楽しくなるんです。

表面的にはそこまでわからないことに拘ることが、このご時世のモノづくりで1番重要だと思うので、これがその一例かな、と。たかがプリント、されどプリントなのだ!



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    この記事の著者

    キタウラ コウジ

    1995年生まれ。wanna studio Inc. 代表 兼 刷り師。工場としての印刷業を営む傍ら、自社によるクリエイティブレーベル〈mod one〉のディレクターとして、シルクスクリーン印刷の魅力を追求 / 発信している。

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