【印論 #5】ゲスト : tossy(SLON STORE)

対談 with tossy 氏(SLON STORE)
印刷工場であるwanna studioが〔プリントを頼む側・頼まれる側〕の関係を持つゲストを招いて、印刷や服飾・その背景にあるカルチャーについて語る対談企画「印論」。第五回は「SLON STORE」のオーナーであるtossy氏との対談。今回は、大阪は南堀江に構える同ショップにて対談をさせていただきました。

コージ : 今日は宜しくお願いします。改めてご紹介いいですか?
tossy : SLON STORE というお店をやっています。2010年から当時ニューヨークで仲間たちとSLONを立ち上げてからTシャツとかキャップなんかを作り始めて、2012年に大阪で今の前身のお店をOPENしました。翌年の2013年から今の場所に店舗を移して、この場所になって今で11年ぐらい経ったところです。
コージ : 元々アメ村なんですよね。後々話で聞いたことあったんですけど、僕はその時はまだ地元なので、当時は存在も知らずでした。この場所だけで、もう11年もやられてたんですね。
tossy : そうそう。早いよね〜。
コージ : それで元々何人かでやっておられたのは、知りませんでした。
tossy : 20代半ばぐらいニューヨークに住んでいた当時は、仲間の何人かでやっていました。その中でメインで動いていたのが僕なので、そのままお店も続けています。
コージ : そうなんですね。ありがたいことで、今でこそwanna studioの中ではトップクラスの古参の方で、昔から仕事いただいているので頭上がらないです。当時、プロとは到底言えない学生のペーぺーの相手に仕事を振ってもらっていて、尊敬と感謝しかないですね。自分の大事なプロダクトをそんな若造に託すことは自分だったら不安しかないはずなので。
tossy : それでいうと、お互い成長してきたなってぐらいの長さだよね。コージくんもだいぶ大人になったよなーって(笑)。
コージ : 主観で見ても当時のスキルや環境からしてもだいぶ成長はしたと思います。トシさんの印象は、ほんま最初から変わらないです。スタイル的なところもですが、ご自身でされてることも一貫していて、ずーっとブレてないなーって。
tossy : 客観的にもそう思われてるんですね。今41歳だから、コージくんとはひとまわりぐらい違うんだね。そっか〜。

コージ : スモールサイズなお店ながらも息が長くて、多くのファンが全国にいると思います。今の場所になって11年経っていて、お店を長く続けられる秘訣はありますか?
tossy : 好きなことをやってるからってのが1番。だから毎日気持ちいい事が起こるからやめられない。ただこれに補足で、服はみーんな好きだと思うんだけど、僕はNYの日常の中にあるカルチャーが好きで、そこにある服を提案するのが好きっていう。半分自己満だと思うけど、それをたまたま喜んでくれる人がいたっていう、まぁバランスだよね〜。それともう一つ、人に恵まれた事です。
コージ : そのSLON STOREの中でも、オリジナルブランド自体の幹の太さをヒシヒシと感じます。
tossy : うちはロゴものが多いんですけど、それもこのお店ありきで、この店の何かを持って帰りたいって思ってもらっています。そうなるとショップブランドをする上では第一に、店の空間だったり佇まいは大事にしています。基本的にはワンオペなんですけど、スタッフには細かいところまで僕の想いを伝えた上でやってもらっています。接客よりも大切にしていることが多いです。
コージ : SLON STORE っていうのはショップじゃないですか。その中で昔からずっとオリジナルプロダクトをリリースし続けておられるんですが、オリジナルはSLONにとって、どういう立ち位置なんですか?
tossy : 完全にこの店ありきのモノですね。この空間で、このセレクトの中で成り立つオリジナルだと思います。そういう意味でも独り歩きはさせたくないので、基本的にはウチでしか売らないようにしているし、これを販売しているのは国内だとこの店だけです。
コージ : SLON オリジナルはブランドっていう発信の仕方ではなく、あくまでお店のスーベニアっぽい要素ではあるんですか?
tossy : そうですね。
コージ : それがすごいなって思うところで。そういうのってカルチャーを売ってる場所でしか成り立たないですもんね。ただ服を吊って、モノの価値だけを売ってる店のロゴTシャツなんて要らないっていうか。きっとファンの人は、そのロゴから感じれるバッググラウンドに共感したいし、そういうものを着たいと思ってるのかなって。
tossy : うんうん。
コージ : ロゴ自体に価値がついてくるのは、ただ時間が経つだけで成せることでもないですし。因みに、SLON STOREとNEW YORK はイコールで結びつくイメージがまず頭に浮かぶんですが、やっぱりその土地に特別なものがあるんですか?
tossy : 普通に住んでたっていうのもあるけど、所謂お洒落な部分とか、色々な側面を含めたニューヨークの「日常と生活感」がすごい好きだったんで、ウチの店の商品を通じて向こうのそういった部分を感じてもらえるところがテーマです。そうすると背景にはニューヨークの日常があるものだけなんですよ。そういった僕の考える向こうの日常をまとめて、表現する場所がSLONオリジナルで、それがルールになってます。

コージ : ニューヨークを直に感じてもらえる場所がSLON STOREで、そういったカルチャーを噛み砕いて発信しているものがSLONオリジナルなんですね。個人的に実際に買い付けされているセレクト品はビンテージに強いとかは全く感じなくて、古くはない現行品もあれば、雑貨もあればって感じですよね。それが向こうのある意味普通な日常感を感じさせているんでしょうか?
tossy : そうですね。たまたまそれが僕の好きな物だったのもありますが、やっぱ1つの物の価値で勝負しててもしょうがないし、ウチでしか見つけれない価値をつけようとしています。少しビジネス的な言葉になるんですけど、物と価格で勝負しないっていうのはいつも考えてます。
コージ : それは大事ですよね。付加価値的なトコロは今の時代、真のカッコいい店とは切っても切れないコトだと思います。服で言うと、どの古着屋にもあるラルフのシャツを正規店以外で買う際どこがいいかってなれば、自分の思う「かっこいい」をトータルで提案してくれる場所で買いたいです。ニューヨークを感じたいものを買うとなれば、僕なら、まずここに話をしに来たいってなります。
tossy : そういう価値をつける点だと、ニューヨークに出向くことも大事だと思ってます。ただ今考えたら数字的には何やってんだってなりますけど(笑)。でも、ただ買ってくるだけでもなくて、現地でパーティーを催したり、向こうのヤツと会ったり遊んだり。感じることだったり吸収するところが多いもので、ただ買うだけではないものにはしています。
コージ : そういう動きがお店自体の分厚さに繋がるものですよね。実情は詳しくはないんですが、まぁ10年前とは比べ物にならないコストはかかってるはずですよね。でも僕はトシさんは今より1.5倍のコストがかかってもニューヨークに行くべきだと思いますし、絶対行ってると思います(笑)。
tossy : そうだね。行ってると思う(笑)。買い付けとかでも謎に誰かが記念に作った個人モノのTシャツとかあるじゃないですか。そんなん結構好きだし、誰か知らんけど16歳の誕生日なんなんだ〜とか(笑)。そういうものって日本でなかなか見つけれない、めっちゃ「日常」っていうところだよね。
コージ : しかも、そういうものが、このお店にとっての「ものづくり」のアイデアになりそうですよね。それって、もしその土地に縁のない僕が日本で同じことやっても中身がなくて「面白さ」はないですし。カルチャーっていうほど大きくはないかもしれないですけど、それをやる意味を持っているというか、喋って初めて感じれる面白さっていう。
tossy : そのために向こうに行ってるところもあります。その中で、所謂ありきたりなニューヨークのかっこいい部分とはちょっと逸れたところを提案しているのはありますね。


コージ : プリントの話になるんですけど、SLONはプリントで言えばシルクスクリーンが多いですよね。トシさんの思う良さって何ですか?
tossy : えーなんだろう。ほんと一言で言ったら「かっこいい」からになるよね。面白い古着のプリントを見てもまず、シルクスクリーンかそうじゃないかは確認してしまうし。風合いって言ったら無意識なうちにシルクスクリーンが一番かな。ってなるね〜。
コージ : シルクスクリーンのプリンターとしては嬉しい言葉ですね。
tossy : 「あたたかみ」っていうのか、なんだろう(笑)。逆に安っぽい感じで作りたい時はインクジェットを使ったりします。
コージ : 安っぽい = インクジェットっていう認識なんですね!こういう僕たちと同じ思いを持たれているリアルな現場の人の声を聞くと嬉しいですね。僕らがやってることは最もアナログだけど、まだまだ戦えるというか、可能性あるんだなって。実際にベタ版を用いるロゴデザインをメインに使ってるSLON STOREだと、発色の良さだったりするとシルクがピッタリですよね。
tossy : そうだね!前にやったゴミ箱とかアサヒビール缶とか、モノにプリントしたものは印象深いですね。CMYKをベタで刷って重なりで色の変化を出したとかも相談ありきでシルクスクリーンでしかできないものができたと思います。ただ、うち自体は毎回工夫を凝らしている訳でなくて、グラフィックにめっちゃ凝ることはないし、ほんと僕が10秒で作っちゃうっていうか(笑)。もちろん譲れないことはあるけど。元々、個人でテキトーに作ってるみたいなものが好きだし。
コージ : 昔は結構グラフィックモノが多かったですけど、ロゴモノが増えた意図は何ですか?
tossy : そのぐらいの時は僕が考えて考えて納得するまでやっていたんですけど、今はSLONのロゴモノを持って帰りたいって期待して来てくれるお客さんが多いので、スーベニアの要素的にも、今はお客さんの期待に応えたいとも思ってます。でもやりすぎてもダメだし、やっぱこれもバランスだよね〜。
コージ :やっぱりこのロゴには、お店の格好良さが付随していると思います。因みに、さっき仰っていた 譲れないところっていうのは何ですか?
tossy : そのモノによるだけど、逆にチープに魅せたいとかはあります。大手ブランドがやるガッチリ綺麗なものを作るというよりかは、感覚的にはちょっと未完成な具合であって欲しいっていうか。垣間見えるテキトーさは、どれにも通じてあるかもしれないです。
コージ : ボディの選び方はどうされているんですか?
tossy : 毎回一番悩んでるところかもしれない(笑)。基本的には日本のブランドのボディは使わないんですが、グラフィック以外でモノとして大きく印象が変えれる要素だから、デザインのコンセプトごとにしっかり考えています。でもロゴプリントものだったり変わらないものは、GILDANとかが定番になってるのかな。どのパターンでも、ボディとデザインが相まって意味を成すようなことは意識してます。
コージ : デザインベースでボディを変える方って少ないと思います。このブランドはいつもボディっていうのが多いです。
tossy : お客さんにとっては買いづらい感じにはなってるかも(笑)。毎回バラバラだから、今回のアイテムはサイズ感どんな感じですかって。サイズスペックは載せてるのですけど、GILDANなんてあんまり参考にならないっていうのもあるし。けどそのボディのテキトー加減もSLONのイメージ的には良いのかも。
コージ : GILDANも羨ましいですよ。テキトーな仕上がりが良いって言われるって(笑)。
tossy : ハハハ(笑)。確かに、プリント屋はそれじゃ絶対ダメだもんね。
コージ : できないですよ(笑)。
コージ : 今後の展望はありますか?
tossy : 成長し続けて、長く続ける。
コージ : ありがとうございました!
(対談後、外でタバコを吸いながら)
コージ : 店前のスーパー玉出も変わったんですね。前と比べたら見た目落ち着きましたね。
tossy : でも玉出を意志を受け継いでるのか、夜になったらあの看板もビカビカに光るんですよ(笑)。
コージ : 玉出イズムは残ってるんですね(笑)。

SLON STORE
2011年に大阪は南堀江にオープン。オーナーが5年間のNY暮らしで体感した「NYローカル」というカルチャーを、ショップ、モノを通して提案している。NYで買い付けたアパレルや雑貨のほか、NYの地元民しか知らないようなギークな代物を揃える。独自の視点でNYローカルを解釈・表現したオリジナルブランド〈SLON〉も人気が高く、2024年には「DOVER STREET MARKET GINZA」でポップアップを開催したことでも話題に。
URL : https://surpassinglife.com/
instagram : @tossynyc_slon
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SHOP INFO
〒550-0015 大阪府大阪市西区南堀江2-5-21
営業時間 : 1PM – 7PM
定休日 : なし
TEL : 06-6567-8193
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