【印論】guest : UC (rajabrooke)
対談 with UC氏 (rajabrooke)
印刷工場であるwanna studioが〔プリントを頼む側・頼まれる側〕の関係を持つゲストを招いて、印刷や服飾・その背景にあるカルチャーについて語る対談企画「印論」。今回はrajabrookeのを運営するUC氏を招いて、同ブランドの直営店である「MANSION BUTIK HALIA」にて対談を実施させていただきました。
コージ : 今回からwanna studioの僕と、毎回ゲストを招いて「印論(インロン)」というタイトル、「印刷論議」と題して、印刷工場である僕たちと、印刷であるプリントをテーマ軸にして、それにまつわるモノづくりだったり、その背景にある対談者についてのカルチャー的なお話をしていければと思っています。
UC氏(以下UC): はい。ちらっと質問表みたいなメモが見えたけど、プリントについてのことばっか書いてあったよ。笑
コージ:一応用意させてもらったんですが、一応です。笑 早速なんですが、軽く自己紹介お願いしてもいいですか?
UC:牛田といいます。出身は東京、大阪在住で、今は「rajabrooke」というブランドを一人で運営しています。ブランド創設が27か28歳ぐらいだったから、今のコージの年齢ぐらいだね。
コージ : もうそれだけ経ってるんですねー。そもそもは大阪のSLONのトシさんからの紹介だったんでしたよね。
UC : あー!そうだね。結構ブランドとしては珍しい形だと周りに言われたけど、最初のデビューシーズンなんかは、いわゆるボディにプリントモノは一切してなくて。普通はストリートブランドとかみたいに、コストもかからないプリントTシャツから入るのがよくあるんだけど。 でも「wanna studio」が前の場所でやっていたタイミングでも、もうプリントは頼んでたね!
コージ : でしたね!カブでUCくんに緑橋のスタジオまで来てもらってたのは覚えてます。笑
今日対談させてもらっている「MANSION BUTIK HALIA」という場所はどういった役割なんですか?
UC : 元々はこのマンションの別の部屋を家として借りてて、ここは事務所兼お店っていう形で、作業もしつつ、お客さんに買い物もしてもらうっていう。今は家は別の場所になって、そこを事務所使いもしてるから、この場所は今軽く改装してて、それが終わったら、少ないけど週2~3とかを店としてOPENしていこうと思ってるよ。
コージ : ブランド始まってからはこのマンションを軸にして動いていはったんですね。ブランドができて、2か3シーズン目ぐらいのタイミングで、UCくんとは関わりができ始めて5.6年って感じでしたね。
UC : そんな前から関わりあるという感じ出してるけど、いまだに「何かサービスを無料で!」でやってくれないよね。笑
コージ : 無料でやりたい気持ちはあるんですけどねー。笑
UC : うそうそ。笑 冗談です。あんまり大量にプリントお願いしてるわけでもないのにうるさいね。笑 でも、ブランドできてからはシルクプリントはずっとワナだよ。
コージ : いや、ほんといつもありがとうございます。僕らはシルクスクリーンというモノで自己表現や仕事をしているんですけど、UCくんはそもそも何でrajabrookeという表現方法を使っているんですか?
UC : 元々自分自身が、「一人の人がやってるワガママなブランド」が好きで。ある一人の人間の頭の中の想像から生まれた創造というか。ただデザインするのが好きなら量販店とかのデザインする方がたくさん仕事もあるだろうし、また違うやり甲斐もあると思う。けど自分は、時代や周りは関係なく自分の世界観を素直に表現できていて、ちゃんと個性のあるブランドっていうものに興味があるのね。だから、世の中に絶対必要なものではない娯楽側の仕事だけど、その分、モノに個性を落とし込むってことができるのかなって。
コージ : 色々な人が噛むような大手だったりは、一人の人としての自己表現には限界がありますよね。やりたいことだけど、本当にやりたいことなのか?って。
UC : 多くの人の意見が入りすぎると、良くも悪くもフラットなモノになりそうで。信頼できる人たちと仕事しながら、そこに個性があれば、出来上がりは自然と人とは被らないしね。
コージ : 人間全部違いますもんね。
UC : そこまで、最終的な仕上がりが同じになるって相当似てる価値観だから、人生境遇とかまで似てるのかなって気になってしまう。笑
コージ : rajabrooke = 牛田くんの投影ってことですね。
UC : まぁ、恥ずかしいけどそうだね。ブランドっていうのは価値観を伝えるものだと思ってて、 自分の名前を冠したブランドとまではいかないんだけど、素直に自分のやりたいことを試していたいというか。ルーツとして実際12年住んでいたマレーシアがあって、幼い頃から馴染みのある響きだったし、マレーシアの国蝶っていうか、蛾なんだけど。そういうのも良いなと思ったし、なんとなくそれをブランド名にしてます。これは本当にブランド始めてから気がついたんだけど、そういえば向こうのクアラルンプール日本人学校で、学年の終わりに作文をかいてて、その作文集の名前が”ラジャブルック”っていうんだよね。小学校は丸々マレーシアだったから6冊ある。小学生の頃からラジャブルックって口で発してたっぽい。笑 ルーツ的なものは自分の根底にあるものだね。
コージ : ずっとその根底にある「何か」が変わっていないんだろうなーってのは、いつもプリントしながらだったり、展示会で見るアイテムから感じるところはあります。
UC : 自分の芯を頑なに曲げない爺さんとかに憧れてたね。「この人ずっと変わんねー。」って人、たまにいるじゃん。流行りとか関係なく。自分の好きなものだけをひたすらに愛しちゃってる人。というか、愛し続けれてる人。まぁでも時代に沿った動きもある程度は必要なんだけど、流行りの中に居座り続けたら自分の好きが何かわからなくなっちゃう。けど、自分の好きを貫きすぎて、常識的な見方ができていないのは個性的すぎるから、共有できることをなるべくわかったうえで個性を残すように意識してます。
コージ : プリント自体は色々な方法があって、rajabrookeでも使い分けはしておられますが、シルクスクリーンを選ぶ時の理由何ですか?
UC : いやーでも、基本はシルクスクリーンがいいと思ってるけどね。でもこれはインクジェットじゃないとっていう場合もあって。写真とかだとかなり細かい描写が必要だったりだとかね。でも基本的にはシルクスクリーンの方が手作業感があって良いから、なるべくできるものはシルクで表現したいと思ってるよ。
コージ : うんうん、やっぱりそこって結構大事なところですよね。いや、大事っていうか、いいトコっていうか。日の丸みたいな、ただの丸の印刷でも素人目だと同じだと思うんですが、そこの背景にある温かみってあるように思います。これって人間的な感覚の話にはなってくるんですが。ipadで描いた絵か、実際に絵の具で描いた絵といいますか。勿論、見た目としての経年を経た時の違いっていうのとかだと、その時がくれば一目瞭然でわかるモノですよね。
UC : うんうん。それにこの間刷ってもらった「BATIK TIGER」のシルクプリントも結構細かいからある程度潰れるかと思ってたんだけど、予想以上に綺麗にプリント仕上がってたからよかったよ。
コージ : あれも輪郭のエッジ含めてシャープな仕上がりで綺麗に出せてましたね。インクの”のせ方”・版のメッシュカウントだったりを、デザインとか版下構成によって変えることで、デザインが綺麗に出る方法を使っていました。ポリエステルでボディが滑らかな分、プリント表面もよりスベッと滑らかな仕上がりですね。
プリントを選ぶ上でも頼む人によって色々選び方はあるんですが、rajabrookeではボディの選び方も特徴がありますよね。いわゆる速乾系ボディを好んで使っている印象が真っ先にきます。
UC : いっちばん最初にワナに頼んだヤツもシルクスクリーンと刺繍を合わせて作った速乾ボディのアイテムだったし、ちょうど今頼んでるもの全部速乾だよね。さっき言った話じゃないけど、コットンの方が需要はあると思うけど、自分自身が単純に汗っかきで。生活にドライ系は必要だから、それを選ぶ機会が多いって感じだね。
コージ : 基本は自分の中の考えを第一にしてるってことですね。ちなみにマレーシアでパーカーとかって着るんですか?
UC : 中一で初めてパーカーというものを着た。
コージ : マジっすか。笑
UC : 雨季はあるけど一年中夏みたいなものだからね。そういう育ちもあって楽な格好だったり、それ一枚でイージーに扱えるものが好きなんだよね。あと、洋服の仕事してて良くないことかもしれないけど、乾燥機もガンガン入れちゃうタイプだから、ポリエステルとかは気にしないで洗えて良いんだよね。
コージ : 実際本当に乾くのは早いですよねー。朝干して昼にはしっかり乾いてるし、横に干してるコットンTはまだ湿ってるけど。あとシワとかの処理とかも実際楽だし、今隣のユタローが着てるのも速乾だけどシルクみたいな肌触りで、インクノリも良いですよ。機能性のあるものだとシルクスクリーンに限らず、プリント屋泣かせで加工がしにくいのが通例なんですが、そこも対策されたものとかも最近は結構出てます。
UC : 今はもうそんな概念もないと思うけど、スポーツ系のボディって、普通はファッションっていうジャンルのものではないけど、機能的であり、ナチュラルに生活の中に落とし込んだ上で「普通」に着てる事が多くて、その感じまで好き。実際rajabookeのLOOKもマレーシアで、現地の人に何気なく「普通」に着てもらうことを意識したりしてます。
コージ : それが自然なものづくりの流れではありますよね。無理に背伸びしたり、自分が説明できないコトやモノを巻き込んでるんじゃなくて、「普通」に自分の生活に根付いているもので回していく感じですね。いいですね。
質問なんですが、ウチにプリントを頼むタイミングで重要視しているところって何ですか?
UC : 実際に行って会いに行くこと。
コージ : あ〜!言われてみれば確かにそうでしたね。9割、いやこれまで全部だったですかね。
UC : プリントモノってプリントサイズと位置っていうのはすごい重要視してる。いつもコージは、行ったらアナログの実寸で出して合わせてくれるから、わかりやすい。実寸サイズのモニターでやるとかも必要がなくて。
コージ : ですね。実際rajabrookeのプリントは、少し気の利いた位置だったりを敢えて選んで差別化を図っているように思います。そういった場合だと余計、画面上で決めて画面上で発注するのでは、頭でわかってたようで、でも実際は違うかったなー、ってこともありますよね。
UC : スタジオっていうだけあってあそこ(=wanna studio)はちゃんと喋れる所があって、一緒に作るような気持ちになるんだよね。
コージ : そこはウチが重きを置いている部分ではありますよね。長く付き合いがあると、僕もなんとなくその人の感覚を汲み取ってこの人はこんな感じが好きだからこう提案するっていうのができることもよくあります。これは画面上だけの関係じゃなかなかできないと思っていて、ウチの強みでもあります。変わったインクとかなんてこともあれば、余計経験者の説明がないと上手く伝わらないので。
UC : うんうん。
コージ : こんなプリントが今、やりたいってあるんですか?
UC : 5年前ぐらいかな、ワナとコラボしたTシャツはゴールドインク使ったと思うんだけど、今はシルバーインクとかもあるならやりたい。ゴールドとかシルバーとかって見た目としてインパクトが大きいし、特徴づけやすい。あと、やりたいというか、ウチのHALIAができたタイミングで作ってもらったポスターとかは結構印象にあるね。
コージ : ポスターもwanna studioにポスター用の大判印刷機を導入して初めてその機械を使って刷らせてもらったんでよく覚えてます。初めての大判ポスターで結構多色だったんで、大変だったんですよね。笑
シルバーとかのメタリック系はインクジェットとかだと表現できないと思います。その時みたいにインク自体をメタリック系を使うこともできますし、ホイル箔って、専用の糊をシルクスクリーンで印刷した上に、銀とか金とかのフィルムを熱圧着する方法もありますよ。
UC : へーいいね。シルバーといっても色々やり方は選べる訳だ!今度お願いするね。
コージ : そうですそうです。是非、色々試しましょう。
最後にこの質問、自分でも質問するものかよくわかんないんですけど、あなたにとってプリントってなんですか?笑
UC : それ、そっちが聞かれる質問じゃない?笑 でも、あー、自分は無地の服を作ることが多いから、だからプリントは一番ストレートに表現できる方法だね。
コージ : ありがとうございました!
rajabrooke (ラジャブルック)
URL : https://www.rajabrooke.jp
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