【印論】guest : TAKESHI WADA
対談 with TAKESHI WADA 氏
印刷工場であるwanna studioが〔プリントを頼む側・頼まれる側〕の関係を持つゲストを招いて、印刷や服飾・その背景にあるカルチャーについて語る対談企画「印論」。今回は、アーティスト / イラストレーターであるTAKESHI WADA氏との対談。場所は2023年から2024年を跨いで催された同氏による個展「the FINDS」の会場だった「W&B Delicious service」の一席をお借りしました。
コージ : 今日は宜しくお願いします。
TAKESHI WADA(以下TW) : お願いします。
コージ : 僕らプリント業者にとっては、創設以来の古参の部類に入るお客さんの1人でもあるタケシくんですが、どういう活動経歴があるんですか?
TW : 経歴としては、コージくんと初めて会った2018年の大阪のPINE BROOKLYNでのグループ展からアーティストとしてのキャリアは始まってるような感じですね。そこからアーティストとして、生活はガラッと変わったかな。その後に個人的な動きも始めるようになって、今このお店を営んでる亮介が元々働いてた帝塚山の「COZY COFFEE SPOT」で個展をしたり。
コージ : 2018年ぐらいが境目なんですね。
TW :2018年の1月20日だね。
コージ : よく覚えてますね(笑)。始まり自体は本当に僕と同じぐらいで、かなり初めぐらいから頼んでもらってた印象でしたが、ちょうどタケシくんが動き始めた頃から頼んでいただいていたってことですね。ありがたいです!
TW : 最初は仕事としては2割ぐらいだったけど、そこから今のこの仕事だけでできるようになって。最初からずっと頼ませてもらってるね。こちらこそありがとう!
コージ : 最初の方は僕らが3輪のキャノピーでよく刷った商品を直接配達納品してた頃があって。一回タケシくんの依頼で箕面の人の案件で、詳しい場所もわからず、「僕が配達直接持って行きます」って言ったものの、もっのすごい山奥で、めちゃくちゃ寒い時期で2時間ぐらい下道走らせて寒くて死にかけたの覚えてます。(笑)
TW : 相当前の話やね(笑)。そのデザインも覚えてるよ!もうかれこれ何回プリントお願いしたんだろう(笑)。
コージ : 元々絵を描くというのはタケシくんにとっては近いものだったんですか?
TW : そうそう。絵は子供のことからずっと描いてて。大人になってからは、先輩のお店のロゴとか、Tシャツのイラストを描くのから始まっていって。20代半ばぐらいからイラスト描いてるだけじゃなくて、作品も描き溜めてて、なんとなく準備はできてた感じかな。
コージ : 僕たちもホームページの挿絵を描いてもらいましたね。僕ら工場としては、オーダーフローのページは、依頼者さんから見てわかりやすいように変えたいっていうのがあって、まず浮かんだのがタケシくんのイラストでした。タケシくんの描く絵自体、僕が好きっていうのもあるんですが、どんな内容でもスッとハマるフィット感あるなとは思っていて。描いていただいた1発目から僕らのイメージを形にしてもらえたので、すごい気に入ってます。その節は大変お世話になりました。
TW : あれを見て「こんな感じにしたい。」ってたまに言われるよ。
コージ : 最高です。今まで沢山タケシくんのデザインを見て、刷ってきました。中には僕ら以外の所でプリントされたものも少しあると思いますが、トータルで見てシルクスクリーンを選ばれていることが多いように思えますが、理由とかってありますか?
TW : あ〜、なんやろう。オレのイラスト自体が色をそこまで使わなくて、シルクスクリーンで扱いやすいイラストだから必然そうなるんだと思う。もうちょっと言うと、経年で若干割れてきたりの雰囲気がいい。実際ずっと着てるものでも、単純にプリントとして「強い」というか、しっかりしたプリントされてるというか。今日は色々私物持ってきてるよ。
コージ : そうですね。着込んでいっても、いわゆるチープな括りとしての「褪色する」っていう感じではないですね。薄くなっていくのも然り、さっき仰っていたヒビ割れとか、一つの味として捉えれる経年変化になってきます。
TW : うんうん、わかる。これとかもだいぶハードに着てたやろから。
コージ : そうですね。僕らとか、飲食さんとかで毎日着るようなレベルになると変化は早いです。でも、週1とかだと数年かかるのはザラですね。古着とかで出回るようなフェード感満載のものは、相当の年月がかかっているか、Tシャツとしてだいぶ過酷な環境だったんだと思います(笑)。
TW : それもそうだし、古着とかの版ズレとかもめっちゃ好きなんよね。オレのイラストは単色が多いからなかなか無いんだけど。
コージ : いいですよね。でも僕ら工場は、逆に版ズレをしないように努力はしなきゃいけないんです(笑)。
TW : ははは、そうやんね(笑)。
コージ : たまにわざと版ズレさせてくれないかって言われることもあるんですけどね。でも、1枚1枚微妙に違うズレ感を出すのは普通に刷るよりかなり工程に時間がかかっちゃうので・・。まぁでもそうしたいって気持ちはめちゃくちゃわかります。
TW : この間初めてイベントで販売する用に、事前に自分でシルクを刷って用意する機会があったんよね。簡易的なセットだったのもあるかもしれないけど、思ったより難しかった〜。
コージ : これはもうどの業界にもある職人的な所ですよね。素人目で見れば「刷る」ことは誰でもできるんですけど、良し悪しはやっぱり出てきます。けど、それはそれでいいんです。自分で刷ったっていう価値はあるので、ちょっとカスれたとかも良さになっちゃうっていう。販売用のアパレル量産だと、しっかり仕上げないといけない場面もありますけど、ポスターとかもアーティスト本人が刷るってこと自体、僕はすごい魅力的に感じます。タケシくんもうち来てもらえれば、やり方は教えるので刷ってもらうこともできますよ。
TW : それは確かにそうやね。作品を買う側も感じ方は絶対ちゃうやろうしね。
コージ : これは昔から続くアナログ故の、他の印刷方法にはできない価値の出し方なので。直筆に勝るものはないかもしれませんが、それに近いスペシャリティ感はあるんじゃないかと。
TW : また今度展示のタイミングとかで刷らせてもらいに行こうかな。ただ、工場がワヤの時だと気まずいから、ゆったりしてる時に行こうかな(笑)。
コージ : 全然大丈夫ですよ(笑)。いつでも言うてください。別の質問なんですけど、ボディに拘りってありますか?
TW : ボディはほんまは理想めっちゃあるんよ。ここのリブがこうなってて欲しいとか。でもなかなか既製品で、しかも価格帯でって言うのはないよね。
コージ : タケシくんがよく使うunited athleもTシャツとしてのコスパはかなり良いんですけど、理想とする細かーい形のドンピシャはなかなかないですよね〜。理想全部叶えればコスト的にウンと変わってきますよね。
TW :ガシガシも好きやけど、なんやろ、トロッとした感じがいい。逆に好きなのを聞きたいよね。
コージ : 既製品ならHANESのBEEFY TEEは好きですね。ボックスシルエットで、気持ち着心地は薄くて、でもGILDANみたいなチープさはなくて結構使います。
TW : オレも四角いボディが好きなんよね〜。海外のボディは縦に長いことが多いから裾を切った時の感じがちょうどいい。でも、いつも好んで使ってるボディはそれをしなくても、ある程度いい感じだから使ってるんよね。ワナでオリジナル作って欲しいわ〜。いつもプリントのカラーとか細かい所は信用して任せれるし、好みも似てるから。多分使いたくなると思う。
コージ : また来年ぐらいに、ウチからブランクボディを作れればいいなーって思ってるので是非使ってください(笑)。
TW : まじ!それは楽しみにしてる。
コージ : タケシくんがモノづくり、いわゆる創作活動をする上で、「これはやってる」っていうルーティーンや、何か拘りはありますか?
TW : イラストのこと以外でも?
コージ:そうですね。まぁコーヒーの飲み方とかそんなんじゃないですけど(笑)。
TW : ははは(笑)。塗料とかを使う画材は片付けるのが邪魔くさくて、昔から鉛筆とかボールペンばっかり使ってて。その名残で今はイラスト描く時は黒のペンしか使わないんよね。PROCKEYの太さ違いの2種類をずっと使ってる。サラピンのPROCKEYも良いんだけど、少し潰れた太くなった具合が結構しっくりくるし、あえてそこまでいったペンを使う場面があったり、同じペンだけど使い分けはしてるね。
コージ : あー!PROCKEYわかります。どこでも買えるものを変わらずずっと使ってるのも、タケシくんのルーツ的にも頷けますね。めんどくさがりじゃなかったら、今のスタイルじゃないかもしれない。僕らはゴールがあった上で、どうソレに近づけるかっていう仕事なんですけど、アーティストさんは0からゴールを生み出す作業ですよね。アイデアはどう生まれるんですか?
TW : アイデア自体は、ふとした所だったり、見間違えからくるから、ルーティーン的なものはないなぁ。
コージ : 絶対アイデアが浮かぶ訳ではない怖さとかありますよね。ゴールがある僕らもそこまで辿り着く方法が見つからない怖さはあるんですが、ゴールさえ見えなかったらって考えたら・・。 超絶技巧派なイラストではないけど、タケシくんの描く絵から滲みでる空気とかカルチャー、すごい好きです。人の絵とか、フォントまで。シンプル真似ができない深さはヒシヒシと感じます。
TW : 上手くなりたいから描き続けているところもあるけど、アイデアはしょっちゅう出てくるもんじゃないからね。少なからず、モノづくりとして似てるところはあるだろうね。
コージ : スタイルを感じれるようになるためには、ソレを崩さず続けないと出せないと思います。今日も過去作を沢山持ってきてもらいましたが、並べると、改めていいなってなりますね。
TW : しかも古着になると、またちょっと良いなーってなる。昔のやつは自分でLEVI’Sの内側についてるタグみたいなイメージで自分でつけたりしてて、今となってはすごい良い雰囲気になってくれてるんだよね。そん時の気分で昔の作ったやつも今でもまだ着てて、やっぱずっと同じのが好きなんやなーって。シンプルなイラストとシンプルなプリントだからこそ、ずっと変わんないで好きでい続けられて、このスタイルが確立したのかなって思う。
コージ : 確かに。昔からから最近まで、イラストの持つ雰囲気とか感じれるバックボーン的な所は不変的で、タケシくんっぽさはずっとありますね。
TW : (持ってきてくれた古着を見ながら)このタグとか昔のSCREEN STARSみたいなやつだね。MADE IN USAだ。
コージ : ほんとっすね、なんかいいですよね。でも正直アメリカ製かどこ製か、実際Tシャツだとモノの良し悪しは産地では変わらないけど、自己満的なところはありますよね。ここは押さえておきたいっていうのか。
TW : デザインで言えば、スーベニアとか企業モノのデザインが好きだから、なんとなくそんなイメージがずっとあるのかもしれない。古着でもコピーライトとか入ってたらなんかヤられるちゃうし、自分のイラストにも入ることが多いし、無意識に押さえてるポイントになってるかも。
コージ : 最後にアホみたいな質問ですが、「あなたにとってシルクスクリーンプリントとは?」をください(笑)。
TW : シルク印刷には、普通の印刷とはちょっと違う温かみはあるよね。
コージ : ありがとうございました。
Takeshi Wada
EXHIBITION ” OTHERS “
2024年11月1日 – 17日
Place : CopyArt Collective
TAKESHI WADA
1992年 大阪府生まれ。16歳の頃始めたサーフィンをきっかけに映画や音楽、建築物、インテリアなど様々な物事に触れ、今の作風に大きな影響を与えている。これまでに楽天イーグルス、木梨サイクル、南海電鉄などのイラスト提供や国内外での展示を活発に行っている。
URL : https://twac.theshop.jp/
instagram : @takeshiwada_
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