【印論 #6】ゲスト : 中井宗太(WHIMSY) | wanna studio

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【印論 #6】ゲスト : 中井宗太(WHIMSY)


対談 with 中井宗太 氏(WHIMSY)


印刷工場であるwanna studioが〔プリントを頼む側・頼まれる側〕の関係を持つゲストを招いて、印刷や服飾・その背景にあるカルチャーについて語る対談企画「印論」。第六回は「WHIMSY」の生みの親・デザイナーである 中井宗太 氏との対談。ワールドワイドな規模でストリートシーンを牽引する同ブランドのアイデンティティを深掘りする。











コージ : 今日は宜しくお願いします。自己紹介をいいですか?

中井 : 「WHIMSY」をやっている中井宗太です。ルーツはスケボーにあって、洋服が好きになったのは確か中学生ぐらい。その頃かなー、セレクトショップをするのが将来の夢になってたのは。それから自分が好きな音楽とか映画・アーティストとかが、スケボーに繋がっていることが薄っすらとわかってきて、実際に高校生の頃にスケボーを始めて。その時に作ったクルーの名前が「WHIMSY」だったんよね。

コージ : 「WHIMSY」というのは、元々はクルーとしてスタートを切ったものなんですね。

中井 : そうそう。俺らってこういう名前でしようぜって若い感じだよね。今考えるとその時には、これをブランドにして、お店を持ってやっていこうって思ってた。スケートビデオを作るために、その頃からパソコンとかは触り始めてたけど、Tシャツとかは手書きとか、簡単なツールで自分で刷って作ってたね。

コージ : 大阪出身大阪育ちで、ずっとやっておられたんですか?

中井 : そう!大きくなるにつれてメンバーが欠けたりは勿論あったけど、その頃の動きが今の前身やね。

コージ :それが 20年前ぐらいの話ですね。その頃からの動きが今の生業になっているのはいいですね。

中井 : それまでも手売りしたりソックスも作ってはいたけど、28歳ぐらいにsupremeを辞めて「WHIMSY」をブランドとしてしっかりと形にしてって流れだね。これやるしかねーっていうタイミングがソコ。

コージ : 最初はPOP UP SHOPっていう形で全国で回ってましたよね。その頃は特に個人的な関わりはなかったのですが、当時から考えると今はとてもお世話になっています。

中井 : こちらこそ。すごいと思ってるよ。当時はスケーターの一人だったから、場面場面で色々な子達で触れ合うことが増えていて、その頃に熱い想いを持った若い人も多かったし、その中の一人にコージたちもいたって感じだね。

コージ : 自分を表現する手段って色々あると思うんですけど、ソウタくんが自身を表現する形として、絵描きでもなく、プロスケーターでもなく、「WHIMSY」というブランドを作ることを選んだのは何故ですか?

中井 : 自分が一番好きなことが「洋服のブランドを作ること」だったからやね。ブランドって「箱」だと思っていて、箱は何を活かすかってなると、その中で働いてくれる人だったり、ブランドを愛してくれる人だったり。喜びとか考え方が交差するし、学ぶこともできる。自分の考え方を共有するのに、ブランドというものがフィットして、その中で自分がやることには自信があったのかも。

コージ : ルーツであるスケートっていうものに還元したい気持ちはあるんですか?

中井:それに関しては「スケートに還元する」には色々方法があると思ってて。だけどそのスローガンが先走っていることが多いと思ってる。パークを作る、スケートショップをする、若いスケートをサポートする、とか。それも勿論素晴らしいんだけど。そもそも、たとえ人に褒められないようなことであっても、「いいか悪いかは自分で決める」っていう考え方が自分に備わったのがスケボーだったんよね。これが好きってなれば、それって言っていいんだよ、みたいな。洋服が好きだった自分にとって何が衝撃だったかって、1つのスケボーのコミュニティの中で、鋲ジャン着たヤツとB-BOYが一緒にいたこと。

コージ : あ〜、確かに。そういうのって他の界隈じゃあんまり見えにくいことかもしれないですね。

中井 : そうそう、お互いを尊重してるなーって。スケボーのそこが好きだった。パンクスもB-BOYも一緒に遊んでるっていう。ソイツのソレはお互い否定しない中で、ダサい・嫌いなことはハッキリと言う。俺はそういう風に育てられたと思うし、今はスケート業界に何かを返したいというより、そういうスケーターのアイデンティティみたいなものをこのブランドを通して表現して、うちのことを好きな子達がその考え方を持つキッカケになればいいなと思ってる。それが自分なりの還元かな。









コージ : 聞いていて面白いです。みんな今日明日の話、自分のことで手一杯になってしまうし、何かに還元する余裕がない人が多い思うんですが、ソウタくんは、スケボーっていうルーツから由来する考え方も持ってして、カルチャーや人への自然な還元の形ができているんだなと思います。作るもの然り、考え方もソウタくんらしいなと。

中井 : 自分ではそこまで自分を分析してないんだけど、そうかな。そもそもそういうこと自体、意識しなくてもいいと思ってて。だって俺だからって思うし。ウチがデザインしているものは、ワナはいつも刷ってもらってるからわかると思うんだけど、無意識のうちにウチらしさはあると思う。どう?

コージ : そうですね。表面的には言葉にはしずらいんですけど、どれでも共通してデザインに対して深い理由をアンサーとして持っておられるイメージはあります。実際にどういうことを重要視しているんですか?

中井 : デザインする上で一番重要なのは、武道でいうところの「型(かた)」だと思ってる。テーマが何か1つあったとして、そのテーマが持つ「型」を理解しておく必要があって、その上で「型破り」っていうことができる。破った部分に言いたいことを入れたり、その破り方にスタイルを入れたり。自分の造詣が浅い「型」に対してはそもそもデザインにしないね。

コージ : 確かに造詣がないと、それに対して失礼で、そもそもダサい話ですよね。サンプリング元を理解しないまま使っちゃうとか。「形無し」ほど浅いものはないので。

中井 : そう、それ自体もスケボーに影響を受けてて。「なんとなくかっこいいクリエーション」は世の中に数多あって、そういうのはすぐにわかっちゃう。俺が思うカッコいいの定義は「よくわからない」だと思ってて。

コージ : というと?

中井 : っていうのはモノの裏にある見えないプロセスである型は必ずしっかりあるべきで。何故ならこうっていう理由を証明できる奥行きのようなもの。例えば、道を歩いていた時に目にする公共に存在するデザインでも、それはソレ自体の強度のためだったり、整備する上での効率を重視するためだったり、色々と理にかなった上でのデザインになってる。だから、ただ単純に目にみえたソレがカッコいいからそのデザインを使おうっていうのは、違う。そういうものがクリエーションの1つとして世に出ていることが多いと思うけど、俺はその語られない「型」への造詣を深めた上で、自分の方程式に置き換えてモノを作ってるつもりだね。自分がインパクトを受けてカッコいい思ってきたものには、最初何でかわからなかったけど、全部奥があったんだよ。だから、「デザインに理由なんていらねー!自由だ!」っていう爆発系の発想にはすぐに共感できないところがあって。

コージ : 確かに、表面的な格好よさの種類ってもう飽和状態で、尚且つ模倣も簡単ですし。そこに理由がないと他と差別するための武器にはならないと思います。

中井 : そういうこともあって、造詣ってすごい大切だと思う。自分にとってのレイヤーがないと自分でも納得・表現ができない。

コージ : そういう姿勢があると、常に生半可なクリエーションはできないって、自分を律せますね。

中井 : 自分のオリジナルって何だ?ってなると、生まれ持った自分の環境に、見たもの・触ったもの・匂ったものなんかの経験と造詣が足されたもの”だけ”がオリジナルになると思う。













コージ : シルクスクリーン印刷というモノへの見方はどうでしょうか?

中井 : シルク屋に言っちゃうのもあれなんだけど、コージのところで多く頼む前は積極的にインクジェットも使ってて。例えばシルクスクリーンの経年変化が正義でもないとも思ってる。でも自分のルーツを辿るとシルクスクリーンがあるし、デザインの捉え方・組み立て方なんかは、常にそのフィルターを通して考えてはいるね。けど、数ある中の1つの手段に過ぎないって言えば、そう。

コージ : 色々な手段が生まれてきている中で、一番クラシックなやり方 = 正解というわけではないのは確かですね。シルクスクリーンが持つ絶対的な魅力は勿論、表現として色々な可能性を孕んでいます。でも、最新と比較すると、できないことも多いのも事実。何を・どういった背景を表現したいかを踏まえた上で、純粋に別の手法を薦めることもあります。どれが正義でもないと思っています。

中井 : プリントだけじゃなくても、自分の憧れたものを真似してやって、飯食って。「昔のモノづくりの通訳」みたいになったら駄目だと思う。それってただの懐古主義じゃん。自分たちは、未来へのアーカイブじゃないといけないワケ。何倍も高くて納期もかかる昔のパーツをわざわざ使ってまで、その時代を再現することはそこまで意味はないと思ってて。それっぽくしてるものの多くは「温故知新」じゃなくて「温故知古」になってるというか、古いモノの知識で、ただそれを今に伝えてるというか。ただ先人が作った型にハマったままで、さっき言った未来へのアーカイブを作る上での型破りになっていないのかな。

コージ : その古いものが当時は最新であって、その時生きた人からすれば、未来(僕たち)へのアーカイブになってる事実があるけど、今の人がそのままやるとただの真似っこに過ぎないかもしれないですね。当時の背景を含めたオリジナルの強さには敵わないですし。それを使うのであれば、それに対する造詣は勿論、自分の箱の中でどう解釈して、アウトプットするのかは大事ですよね。

中井 : 昔のものにガツンとくるのはいいけど、それを改めて作るだけだと「それはダメだろ」って(笑)。今の若い子が作るのは、そういう昔あった「温故」の部分であるステップを踏んでいなくて、その辺をぶっ飛ばしたデザインを作ったりできるから、時代って面白いと思う。だから自分もそういう意味で、古き良きに囚われないように、常に疑っているところはある。「今」をやりたいんだよね。

コージ : 僕たちはポジティブな意味で、その古き良きなシルクスクリーンっていう型に囚われています。プリントファクトリーとして、それをドシっと武器として持ち合わせた上で、それを破りながら発信していこうと思っています。

中井 : それはシルクスクリーン工場であるワナとしてはいいところだよね。普通にステキやんっていう。型をしっかり持った上でそれを破ろうとしているから、いつも魅力的なプロダクトに感じるよ。逆にそこに拘る理由は何なの?

コージ : ありがとうございます。自分のルーツであるココを土俵に設定したから、ここで戦うというか。1つのコトに特化する「職人」っていう言葉も好きなんですけど(笑)。そこから外れると、この手法を提案する側として、どこか説得力に欠けてしまいますし。色々な人に、言葉にしずらい魅力を知ってほしいのはあります。

中井 : いいね〜、考え方の根本は俺らは似てるかもしれないね。













コージ : 今後の展望はありますか?

中井 : 今大阪にいる理由が居心地以外になくってきているところはあるから、東京に住もうかなーって思っていたりはしてる。この3年間ぐらいの自分の目標が、クリエーションとして世界に出ていきたいっていうのがあって。2024年だけでも、ミラノ・ロンドン・アメリカとか、4カ国ぐらいでポップアップもしていて。

コージ : 確かに昨年は海外に出向いている機会が多かったですよね。はたから見ていて、次の動きをしてはるな〜って。

中井 : 現地の人からの評価も自分で感じてきた中で、日本でカマして、向こうの人を呼んだ方がいいわって(笑)大変なこともあるけど、世界に出ていく中で、東京に店を出して自分も住んでっていうことを考えてるよ。

コージ : どのレベルにいる人でも次を見据えて動き続けないとですね。今日はありがとうございました!








WHIMSY


スケートボードをバックボーンに2015年に始動。ソックスをキャンバスに見立て、そこにデザインを落とし込むスタイルを得意とし、様々なアーティストやグラフィティライターと共産されたソックスを中心に機能面に優れたものや従来のソックスの形を破る風変わりなもの迄様々なソックスを生み出している。現在ではソックスのみならず、そのノウハウを活かしたアイテムや、Whimsy独自の視点から生み出されるウェアもフルラインナップで展開している。



URL : https://whimsysocks.com
instagram : @whimsysocks


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