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PRINTING LAB

SIMULATED PROCESS PRINTING〈特色分解〉で刷る。


シルクスクリーンにおける表現方法の種類について


シルクスクリーン印刷と一概言っても、デザインによってどう刷るのかは様々。
そのやり方の中でザックリと2つに分類することができます。


● ベタ印刷

→ 不透明度100%で塗り潰された「パス」で構成されるデザインに用いる方法。



● ハーフトーン印刷

→ フルカラーやモノクロのデザインに用いる方法。デザイン画像をハーフトーンに変換し、その網状の点の大きさや密度でデザインを表現する。



シルクスクリーン印刷においては上記2種類に分けることができます。まずザックリとこの違いを理解してもらえば。それぞれの印刷方法に適したデザインが下記になります。



ベタ版が効果的なデザイン例 : Apple(1998)


ハーフトーン版が効果的なデザイン例 : Apple(2007)




1998年の方は塗り絵のようにパスに沿って塗りつぶされた単一色のデザイン。一方で2007年の方はモノクロカラーではあるものの、デザインの中に階調(色の濃淡)があり、不透明度100%で塗りつぶせる箇所は存在しません。白と黒、この間で存在する色数は実はかなり多いものなっているため、塗りつぶしを基本とするベタ印刷では対応ができないんですね。



SIMULATED PROCESS PRINTING〈特色分解〉ってナニ?



表題にある「SIMULATED PROCESS PRINTING〈特色分解〉」(以下 SIM PROCESS)はハーフトーン印刷に属します。具体的に何かを僕的解釈で言うと、「デザインをシュミレート(模倣・再現)しながら、プロセスカラーの表現方法で印刷する」です。




・・・



「は?」



はい、ですよね。


そもそも本記事は、シルクスクリーンに興味がない or 少しばかりの知識がないと、全く面白くはありませんのでご了承を。それでも読み続けていただけるニッチな人はこのままスクロールを。




ベタ印刷であれば、仕上がったパス化されたデザインデータを各カラーごとにまとめて製版して刷れば、そのデザインがTシャツ上でデータと同じくそのまま仕上がります。(かなりシンプルにいうと。)


ただ、SIM PROCESSでは少し複合的で


①フルカラーのデザイン画像を特定色に分解し、各色をハーフトーン化。
②選定したスポットカラーのハーフトーン同士がブレンドされて、フルカラーの表現が可能なプロセスカラーになる。


という塩梅になります。ただ、デザインをスポットカラーに分解する①のところにおいて、ベタ印刷とは比べてSIM PROCESSを行う場合には専門的な知見やスキル・センスが必要になります。





実際に刷ってみる



今回用意したグラフィックがコチラ。





今回はこのデザインを7色に分解し、Tシャツの上でSIM PROCESS を用いて再構築していく作業になります。


BASE WHITE


BLACK


BROWN


YELLOW


GREEN


HIGH LIGHT WHITE & CLEAR GEL



キモチィー!!



やはりいいプリントができた時には「ニヤリ」を気持ちの悪い笑みがコボれます。刷りながら、データよりもう少し色味をこうしようか、ああしようか、なんて言いながら遊んだりしました。全てのカラーがPANTONEカラーに調色したラバーインクです。



デザインの細部を見ていくと、ベタ印刷では印刷できない細かいディテールを確かに感じれます。絶妙な位置関係の中で各色のハーフトーンがブレンドされることで、スポットカラーのベタ印刷では表現ができない中間色や、詳細なデザインの雰囲気を表現することができました。


この印刷方法は、コンマ数ミリのレベルの精度が必要な位置調整と、印刷技術が必要になります。しかも手作業での印刷になるので、刷り方を誤れば仕上がりに影響が出るのはいうまでもありません。それに加えてSIM PROCESS PRINTINGは、刷った時に仕上がりがどうなるのかをシミュレーションしつつ版下データを作成する。そして印刷機の前に立つ現場においても、インクの調色や刷り方で仕上がりをシミュレーションしながら印刷する。この2段階での調整が必要になるのです。ん〜、奥が深い。







これは+α要素にはなるのですが、水滴の持つ艶を再現するために、クリアゲルをベタ印刷して視覚的なエフェクトを追加しました。こういうシルクスクリーンにしかできない表現方法っていうのは、この印刷における醍醐味ですね。オモシロイ。





まとめ



同じプロセスカラーの印刷方法で挙げられるのが「CMYKプリント」になるのですが、この方法は膨大な手間と、避けられない個体差があります。それと比較するとSIM PROCESSは個体差が非常に少ないのがメリットになります。もちろん手刷りでの作業になるので全く無いという訳ではないですが、量産する際でも問題のないレベルに安定します。


今回のように、CMYKプリントより必要なスクリーン数が多くなる場合もありますが、デザインの色域が狭いと版数を抑えながらもフルカラー印刷が可能な場合も多々。また、通常のベタ印刷に使うインクと同様に隠蔽度の高いラバーインクを使用できるため、下地(生地の色)が白色でなくても印刷することも可能なのです。


ベタ印刷との掛け合わせや、パステルカラー / 発泡インク / リフレクター / クリアゲル など、特殊インクを併用する事もできるので表現の幅がグググと広がります。


あとは、こういったデザインを手作業で作り上げたというロマンと満足感は、その作り手やその先にいる購買者にとっても大きいと思います。イチ印刷物として、作品自体に1つ売り文句にもなりうる厚みが生まれます。今では「古き良き / クラシック」になりつつある手法、その言葉すらも商品や作品にとっての付加価値になります。




プリントをご依頼の際、データ分解作業は弊社が行うので、専門的な知識は不要ですのでご安心を。

どういう仕上がりにしたいか、コストがどれぐらいかかるのか、などを踏まえた上でベストなプリントのご提案をさせていただきます。


プリントのご依頼や、この印刷方法について気になる方は是非お問い合わせください。




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    この記事の著者

    キタウラ コウジ

    1995年生まれ。wanna studio Inc. 代表 兼 刷り師。工場としての印刷業を営む傍ら、自社によるクリエイティブレーベル〈mod one〉のディレクターとして、シルクスクリーン印刷の魅力を追求 / 発信している。

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